免疫細胞治療支援サービスによって、2003年東証マザーズ市場に上場した株式会社メディネット。CBO(Chief Business Officer)を勤める春山氏にメディネットの事業とその中での春山氏の役割について聞いてみた。今月のC-Class|人材紹介サイトC-Class

【プロフィール】

春山佳亮

1970年10月 千葉県柏市生まれ。2001年 5月 (株)メディネット入社,管理部マネージャー。
2001年11月 取締役 管理部長。※財務・経理、人事・総務、情報システムその他管理業務全般を所管、ゼロから管理体制を構築。2002年 2月 取締役 管理本部長。2002年 9月 取締役 CFO(最高財務責任者) 。※財務・経理、経営企画、IPO業務をメインに管理全般を所管。上々後、執行役員体制。の拡充に伴い、財務・経理、経営企画に注力。( 2003年10月 8日 東証マザーズ市場に上場)。2007年 4月 取締役 CBO(最高業務責任者)。

ひとりひとりの顧客とモデルケースをつくり出す

私は、細胞医療支援事業を手がける株式会社メディネットで、CBO(Chief Business Officer)を務めています。現在の主要事業は、がん免疫細胞治療を実施する医療機関への総合支援サービスですが、細胞医療は、従来の医療技術・医薬品とは異なる次世代医療技術であり、まったく新しい分野ですので、現行制度の中で、従来の医療現場に導入していくには、数々の障壁があり、その障壁を取り除いて、地域チーム医療におけるネットワークを構築すると共に、個別医療機関のニーズと体制に合わせて実施スキームを提案していく必要があります。
まずは、学術営業といって、医療従事者向けに論文やデータ、学会発表など、最新の学術情報を提供したり、当社の技術内容や取り組みを示したりして、がん治療のオプションとしての有用性を伝えていくわけですが、まずそれが大変です。また、その有用性や期待をご理解いただいたとしても、実地医療としての導入に当たって求められる制約条件や課題は、医療機関によってさまざまです。がん治療は、手術だけでも抗がん剤だけでも、勿論免疫細胞治療だけでも駄目で、それらを戦略的に組み合わせた集学的治療を行なっていくことが肝要ですから、医療機関同士の連携もアレンジしていかなくてはなりません。
このようなさまざまなケースに対応し、顧客と一緒になってモデルケースをつくっていくことが私たちの営業スタイルとなります。営業というよりは、一つ一つが事業企画というイメージです。
よって、それを実現するためには、やはり、ひとりひとりのスタッフの創造力、企画力、そして何より、このような治療技術を普及させたいという情熱がとても重要になってくるのです。

人を育てるためには、一緒に行動することが大切

では、当社において人を育てるということはどんなことなのでしょう。
私たちが扱っているのは、最先端のバイオテクノロジーに基づく医療技術であり、先例のないものをつくっていかなければなりません。一般的な医薬品とも違います。医師が処方箋を書けば済む「物」を売るのではなくて、医師自らが細胞加工を伴う細胞治療を実施できる体制を作らなくてはならないわけです。セールス・エンジニア的な仕事だけでなく、制度的な制約が多い中、事業企画的な創造力と柔軟性が求められます。
医療・医薬分野において、このような経験を持っている人は極めて稀です。新卒は勿論、キャリア採用であっても、「即戦力で採用したんだから」と口頭指示だけで突き放したら、仕事にならないどころか、会社のレピュテーションを著しく貶める、最悪の結果となってしまいます。また、よくよく考えると経緯や背景、必要な関連情報をきちんとスタッフに展開していないのに、自分にとって当然すぎることであるために錯覚してしまい、これくらい解っているだろう、できるだろうと思い込んでしまうこともありがちです。
ですから、まずは、方針を明確に示し、常日頃から事業環境や関連情報のブレイクダウンを行なって、各スタッフが適切な判断ができる下地を作ることが第一ですね。また、口頭で指示を出すだけではなく、まずは一緒になって取り組んで、行動し、自らの過去の行動パターンではあり得なかった成功体験を感じるところまでをリードするようにしています。
また、当社では、新たな案件や取り組みのほとんどを部門横断的なプロジェクト・チーム、もしくはワーキングループで遂行しており、若いスタッフにも、積極的に参加してもらいます。その結果、情報や知識、認識の共有が進み、事業全体に対する理解が深まると共に、プロジェクトの遂行を通じて企画力が培われるなどの効果もあります。
私は2007年からCBOとして、細胞加工部門、営業部門、マーケティング部門を統括しているのですが、いわゆる営業畑の人間ではありません。そのことから、当初、社内の一部からは、泥臭い営業経験のない人間が営業部門を統括することができるのか、というような懸念も聞こえてきました。しかし、当社の学術営業は単なる物売りではなく、どれだけ事業に精通し、発想力と企画力を持っているのかが重要であり、また、そもそも役員、Chief Officerとして営業部門を統括するということは、現場営業のプロフェッショナルかどうかとはちょっと違う次元の話です。CEOになる人が全ての業務経験を持っているわけではない、その必要はない、ということを例に挙げれば解りやすいかもしれませんね。第一回のときにお話しましたが、Chief Officerの役割は経営そのものですから、重要なのは、戦略思考と判断能力、そして人事マネジメント能力です。詰まるところ、マネジメントの要諦は、目的を達成するために必要な人材を確保し、適材適所に配置した組織を構築し、機能させ、維持することができるかどうかということかと思います。そして、その組織の構成要素である一人ひとりのモチベーションをいかにアップさせるのかが大切です。能力があっても、適材適所でも、モチベーションが低ければ、能力は発揮されませんから。
私は、ビジョンと経営方針、戦略を明確に示し、戦略の意味、そう判断するに至った経緯や背景の説明、事業環境動向と周辺情報をのブレイクダウンを徹底して行なうようこころがけています。また、事業戦略上、または個別案件遂行上の各部門、各人の役割をできるだけ明確に伝えます。その機能や役割の相関関係をきちんと理解して動いてもらうことが組織を強くする方法のひとつだと考えているからです。

ゼロベースで考えられる人間が強みを発揮する

話は変わりますが、よく自分は前職ではこうこう、こうで云々と、過去の成功経験や実績、過去の栄光を誇らしげに語り、これはこいうものだと決め付けてばかりいる人がいますよね。ビスマルクの言葉通り、まさに愚者は自らの経験に学ぶ、です。
確かに、それまでに培った知識やスキルはとても大切な財産ですが、ある特定状況下における経験や実績は過ぎし日の思い出でしかありません。それよりも、自分の経験や既成の概念に捉われず、物事を本質的に捉え、ゼロベースで考えることができるかどうかが何よりも大切だと思っています。これがないと、実はせっかく培った知識やスキルは全く活きず、むしろ大きな間違いを起こすこともあります。
ですから、社内においては、とにかくこれはこういうものだという既成概念、既存の枠組みを取り払って、一見、馬鹿馬鹿しく思えたり、荒唐無稽に思えたりするようなことでも、思いつきでも良いから、どんどんアイディア出し、提案をしてほしい、とよくスタッフに話しています。

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