次世代の継承者をつくることが経営の重要課題 今月のC-Class|人材紹介サイトC-Class

【プロフィール】

伊土 誠一

1947年北海道生まれ。71年日本電信電話公社(現NTT)入社。大型コンピュータDIPS用OS、ソフトウェア工学の研究開発に従事。00年NTT 情報流通基盤総合研究所長。03年NTTソフトウェア常務取締役 営業戦略本部長、07年代表取締役社長に就任。

IT業界における人材育成の課題

私は常々、IT業界における労働環境について、大きな課題があると感じています。
システムがますます高度化・複雑化する一方で、開発の短納期化を求められています。開発技術者の労働時間が長くなる、目先の仕事に追われて人材が育たないなどの問題があると思います。
これらは主に、プロジェクトの開始時点でのエンドユーザーとの仕様のあいまいさや、情報や知識・ノウハウの個人差が大きいことに起因するのですが、このままの状態が続けば、この業界には決していい人材は育ちません。中国、インド、ベトナムといったIT産業の急進国に負けてしまいます。これは由々しき問題です。
業界を改善しなければならないと強い危機感を持っています。

情報量の差が仕事の差、「見える化」することが大切

現状では、仕事はデキる人に集中する傾向にあり、どうしても一人の人間に負担がかかります。それだけでなく、一極集中によって分配効率が悪くなり、次世代の人材が育たないという弊害もあります。
これは情報や経験則が暗黙知として特定の個人に集積され、形式知として共有されていないからだと考えます。例えばハードメーカーであれば、ラインにおける生産量、効率、トラブル状況などの情報はすべて数値化され、関係者間で共有されます。しかし、ソフトウェアの世界では決してそうはなっていません。
多くの情報を公開・共有することにより、多くの人の知恵を引き出すことができます。個人の暗黙知に頼るのでなく情報とノウハウの「見える化」を進めることで、どのポジションの人もプロジェクトにタイムリーに貢献でき、ワークシェアリングが可能になります。

緻密さを必要とするソフトウェア開発には女性の力が必要

私どもでは女性が活躍できるサポート制度を積極的に取り入れています。出産・育児の社員を支援するメンター制度や在宅勤務制度で数々の賞を受け、子育て支援に積極的な会社として厚生労働省が認定する「くるみんマーク」を取得するなど、その取り組みは高く評価いただいています。

1500人の全員が10%底上げをすれば150人力になる

弊社が進めている「見える化」では、失敗例から経営情報にいたるまでほとんどすべての情報を公開します。
情報をより多く、早く、機会均等に提供することで、限られた数人の人が会社を動かすのではなく、社員全員が会社の発展を考えるようになります。一人ひとりの問題意識やモチベーションが向上し、責任感が生まれてくるのですね。
これが社員力というものだと思います。1500人の社員全員が10%ずつでも底上げすれば、それは150人分の力に相当するわけで、これはとても大きな戦力増となります。 私どもでは、部門ごとはもちろん、より小さい単位の案件ごとに、プロジェクトの進捗から原価、売上利益、生産効率にいたるまで、リアルタイムに数値を見ることができます。この数値を元に、カイゼンを日々行っていくことが、会社が前進することにつながっていくのだと考えています。

PDCAの繰り返しと水平的横展開で組織は強くなる

カイゼン活動というと、今さらな感じもするのですが、これはとても大切なことだと思っています。継続していくことに本当の意義があります。どんな仕事も標準作業化できていれば、前任者のレベルまではすぐできるようになります。後任者は、その仕事をする度に少しでもカイゼンすること、すなわち一回のカイゼン効果が小さくても、その活動を継続することが大切です。その1回々々の前進を促すのがカイゼン活動だということなのです。
組織力を向上させることは、ソフトウェア開発と同じで、進捗状況を数値として把握し、PDCA(Plan Do Check and Action)を繰り返すことが重要です。そして、それが成功したら、他部署に水平展開していくことで、個人も成長し、組織も成長するのではないでしょうか。